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[感想]虐殺器官

この世界は腐っている!←知るかよお前は誰なんだよ

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

読んだ

伊藤計劃虐殺器官、ハヤカワセールで安くなっていたので買ってみた。

ハーモニー同様、正しさを敷衍してくとそこにはスーパーフラットディストピアが出来上がるよ?という結末をさらっと無味乾燥に描いていて、まあそうだよなと思いつつめっちゃモヤモヤしてしまった。
振り上げた拳をどこに下ろしていいやら分からないまま終わるの、まさに正しくSF小説って感じ。
これで虐殺器官、ハーモニー、んで屍者の帝国伊藤計劃プロジェクト全三作を読んだんだけど、個人的には屍者の帝国が一番好きかもしれない。
クッソ読みづらいけど
屍者の帝国、ハッピーエンドかどうかはともかく、まだ人というものに希望が持てる終わり方だったように思う。虐殺器官?知らん。
伊藤計劃は多分、キャラクターというか人間にそんな重きをおいてない気がする。今回の主人公であるクラヴィスや霧慧トァンでさえも代替可能な存在で、滅茶苦茶ドライな視座を持っているからこそこの読みやすさというか読後感に繋がってるんじゃないかと思う。
虐殺器官、Project Itohの一環として2016年に映像化されることが決定しているんだけど、めっちゃ攻殻っぽくなりそう。ハーモニーより絵面が映えそうって思った。(海苔とかオルタナとか)


あらすじ

サラエボで発生した核爆弾テロの後、世界は戦争とテロに怯え徹底的な管理社会を敷いた。
主人公クラヴィス・シェパードは虐殺を扇動してまわる幽霊、ジョン・ポールの影を追ってチェコへと向かう。

だいたいのこと

ジョン・ポール「サラエボのテロで妻子が死んだので虐殺の文法使って途上国にカオスを蔓延させるで〜これで先進国はテロに怯えずに済むわ」
ラヴィス「やめろや」
ジョン・ポール「せやかて工藤、アンタかて混沌を正すと言いつつ要人暗殺しとるしその過程で人殺しまくってるやん。知っとるかお前が使ってる人工筋肉の出処?お前もワイも同じ穴のムジナや」
ラヴィス「しゃあないやん…」
ジョン・ポール「その無関心さがやがて世界を滅ぼすんやで?」
ラヴィス「うるせえ(ボコー」
ラヴィス「やってしまった…罪滅ぼしに虐殺の文法でアメリカ滅ぼすわ」
✞大災禍(ザ・メイルストロム)✞
ハーモニーに続く

無関心は罪か

虐殺器官、正直説教臭いと感じた
要は歪みを正せって話だと思うんだけど、極端な思想の純化はそのままスーパーフラットディストピアに収束するより他なく(ハーモニーの世界)、それもまたマッチョすぎるんだよなあ〜って思った。
ジョン・ポールもクラヴィスも、今まで見て見ぬふりをしてきた歪みのツケを世界規模で払うことを選択した人間なんだけど、それはまさに新たなパブリック・エネミーの誕生ってだけの話で、当人たちの罪とカオスが釣り合ってないんですよね。
セカイ系〜♥
人が生まれ落ちた瞬間に全て罪人だというなら、それを裁くお前は何者なんだよって話ですよ。
それこそまさに「邪悪」と呼ばれる行いなんじゃないかと思ったり。
玉虫色最高〜♥

以上です。