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[感想]ウォッチメン

アンチヒーローの極点

観た

DCコミックへの理解を深めるために、傑作と名高いウォッチメンを観た。
自分はファースト・アベンジャーやファースト・ジェネレーションみたいな、実は歴史にヒーローが介在していたみたいな偽史が好きマンなので、冷戦真っ只中の時代にスーパーヒーローが誕生したらどうなるかを描いたウォッチメンの世界も楽しめるんじゃないかと期待していたんだけど、想像以上に暗く重い話だったので (R15でした) めっちゃウヘエってなった。
観た後に何かを考えさせられる映画が良い映画だと言うなら、間違いなく最高の映画だと思うんだけど後味が悪すぎてウーンって感じですよ。
結論:DCコミックはクソ。MARVEL最高♥


オジマンディアス

ウォッチメンの感想、ヒーローの誰を語るかでその人のヒーロー観が測れる気がする。
ハードボイルドなダークヒーローが好きならロールシャッハを、再起する正統派ヒーローならナイトオウル、より超常的な神としてのヒーローを求めているならDr.マンハッタンを。
(ウルトラスーパーデラックスマンが好きならコメディアンですな)
個人的に気になったキャラクターは「完璧超人」オジマンディアスで、元ヒーローの知名度と名声を駆使して実業家となり、自らをモチーフとしたグッズや玩具を売ることで莫大な富を築き上げ、それを使って世界平和(冷戦終結)を実現しようとするナイスガイなんだけど、世界平和実現の方法があまりに突飛すぎたというか…。強力なパブリック・エネミーを誕生させることで人類を一致団結させる腹積もりだったというね。
コメディアン「半端ねえ(ジョババー)」
誰もが一度は考えるけれど、あまりに犠牲が大きすぎて誰も成そうとは思わないやり方。
ウォッチメンに登場するヒーローは、皆アンチヒーロー的な側面を持っていて、例えばコメディアンは正義にかこつけて暴力振るいたいマンだし、Dr.マンハッタンならスーパーパワーを持つがゆえに人間性を喪失した神(もはや災害)として描かれる。自らの正しいことのために法を破りまくるロールシャッハなんかもそう。ある意味ヒーローが持つ負の一面をより強調した姿として描かれているんだけど、オジマンディアスは皆が今まで見て見ぬふりをしてきた「多数の幸福のために少数の幸福を犠牲にする行為」を躊躇いなく実行に移せるヒーローだったんですね。
その凶事は実行され、そしてその顛末をウォッチメンたちは黙認することに決めた。(唯一ロールシャッハのみがそれを公表しようとしてDr.マンハッタンに殺される) オジマンディアスはヒーローの生まれ故郷アメコミだからこそ登場したある意味究極のアンチヒーローって感じでしたよ。
ヒーローが力を持ちすぎるとアンチパワーもより強力になるというのは過去数多のヒーロー物語が証明しているんだけど、それを精算するためにヒーロー自らがパブリック・エネミーとして君臨するの、悲しいけどなるほどって思った。

(ウォッチメンのモチーフとして血の垂れたスマイルマークが度々登場するんだけど、核戦争への残り時間を示す終末時計のメタファだと長らく気付かなかった。こういうモチーフを効果的に活用するのめっちゃアメコミ〜って感じですな)